一歩の計画では、
藤井寺から焼山寺までは３人が歩いて、
一歩はひとりだけ車を運ぶ役に回ろう！
歩くのはコリゴリだと心の中で決めていました。

そうしたらねぇー！
本藤さんのお友達の木々中さん(仮名)が、
途中の柳水庵まで車を運んでやろうと接待の申し出

キャー！
一歩の役回りを取られてしまった。
接待だからむやみに断るわけにもいかず！
かと言って最近山道はトント歩いていない
トレーニング不足・・
アーア！
と天を仰いでしまった。

３／２８日、他の３人は藤井寺にお参りしてから遍路ころがしに取りかかると云うのに、
一歩だけは藤井寺を横目で見ただけで一足先に登り始める。

「唯一残った弘法大師の道」なんて遍路の心をくすぐる掛札を横目に
急な山道を、朝の冷気に後押しされながら登る。

私たちが登った１２年前は、遍路道に階段などどこにも見つけることは出来なかったが、
今では、遍路道保存協会の方々のボランティアで道が整備され、
休憩所が作られ、
休憩所では見晴らしをよくするため木を切り
鴨島の街並みが見渡せるように整備されている。

一歩はゆっくりペースで誰にも邪魔されないように、
いつもの散歩と同じように
只ひたすら脚下の道を見つめて
ゆっくり歩む。

途中、瀬間さんが追い付いてきたが、
どんな話かけにも相槌程度の受け答えで
呼吸を乱さないようにゆっくりペースを守る。
藤井寺と焼山寺は距離にして２０ｋｍほど、
考えてみると我が家から初詣にお参りする草戸の稲荷神社と同じ距離である。

長戸庵(ちょうこあん)まで約１時間で歩くことが出来た。
この調子だと焼山寺まで歩けそうだ！
・・・そこで「柳水庵じゃなく焼山寺まで歩くぞ」
と皆に宣言してしまった。

長戸庵の休憩もそこそこに、
一歩はみんなより早めに腰を上げて出発する。
長戸庵から柳水庵までは、森の中の道を落ち葉を踏みしめ
木々を眺め
只ひたすら歩行禅と言うべきか瞑想の歩みと云うべきか！
ひたすら足を前に出すだけの山道である。

長戸庵から柳水庵まで又１時間、
一歩が柳水庵に着いた時には木々中さんはまだ着いていなかった。
一歩達が歩いた１２年前には、年老いた庵主が熱いお茶とコンペイトウの接待を出してくれた。　
このコンペイトウが美味しかったなー！
雨に打たれ身体にその甘さがしみこむほど美味しかったなー！
・・・でも今は、庵主がいない無住の庵になっていた。
無常の世は一時も休むことなく
時を刻み続けているのだから、仕方ないこととは分かっていても、
それでも、ひょっこり目の前に現れて低頭してお礼を言いたかった。

一歩は柳水庵の美味しい水を飲んだだけで、
休憩も取らずに又、
一本杉へと歩を進めた。
一心の話によると、
一歩が出発して間もなく木々中さんが到着、
ラーメンやおむすびの接待を頂いたんだと！
・・・道理で、一本杉庵でも追いついてこないし
左内村でも追いつかないし、
ヤット、焼山寺に上る最後の杉林のなかでヤット追いついてきた。

焼山寺に着いたのは午後１時
７時に藤井寺を出発して６時間で焼山寺に到着した。

２回目に歩いた2001年には１１時には焼山寺に着いたと記憶しているので、
１０年の歳月は足の衰えを感じずにはおれなかった。アーア！